団子紋

なんと、「団子」までが家紋になっているのだ。
その驚愕の団子紋の正体とは?
血なまぐさい話だが、団子紋はそれだけではない!
この話の続きは『家紋を探る』に収録されています。

第一話 「団子の紋はある?」

以前、一週間に渡り、ラジオで大宮華紋を始め家紋全般の話しをさせて頂いた時の出来事である。
四日目の夕方にラジオを聞いたとおっしゃる方から仕事中の私に一本の電話が入った。

私の家紋は『団子を三つ横に串刺しにした紋』です。ご先祖の墓に確かにそう彫り刻んであるのですが、本当にそのような家紋が存在するのかどうか、図書館へ行って色々調べてみても、何もわからないのです。まわりの友達なんかは『おまえのところの先祖は冗談で団子の紋を作ったのでないのか?』と、皆バカにするのです。今日ラジオを聞いていて、今週は家紋特集だと分かり、早速局へ問い合わせてみたという事なんです。

と、話しの内容はこうであった。
電話の主は地元でお商売をしていらっしゃるご主人。そういえば当時はラジオや有線で「団子三兄弟」の歌が毎日幾度となく流れ、流行っていた。タイミングがタイミングだけに恥ずかしい思いをされていたのであろう。
私はこの電話の傍ら、何冊かの紋帖を調べながらご相談に応じていた。やはりこの紋は大変珍しく、私も今まで仕事でも関わった事はない。
調べた結果、紋帖では「因幡団子」として斜めに三つ串団子。そして「丸に二つ串団子」や「つなぎ団子」などが見つかった。種類はさほど多くは無かった。やはり珍しい家紋なのだ。知らない者が多くいてもさほど不思議では無い。

丸に二ツ串団子
丸に二ツ串団子
因幡団子
因幡団子
つなぎ団子
つなぎ団子
須浜だんご
須浜だんご
「平安紋鑑」より引用

上記の家紋は平安紋鑑に収録されているれっきとした家紋である。
そして日本家紋総鑑では、やはり紋帖にはないものが収録されていた。(下記画像参照)

丸に二ツ串団子
丸に二ツ串団子
因幡団子
因幡団子
丸に三ツ串団子
丸に三ツ串団子
丸に三ツ串団子
丸に三ツ串団子
陰丸に因幡団子
陰丸に因幡団子

『日本家紋総鑑』より引用

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第二話 「戦いのモチーフ」

さて、問題の質問者のおしゃっている「横になっている串団子」だが、日本家紋総監では丸付きで紹介されている。
そもそも家紋の元のデザインは丸などがない状態のものが原形である。その原形の家紋を「分家が本家との区別目的で形を変える」事によって家紋のバリエーションは基本的に増えていくのである。そしてその中の一例として「丸を付け加える」などもそれに当たる訳だ。
そこで私は質問者に対して、まずその問題から答えることにしたのだった。
「今、お話しをお伺いしながら色々資料を調べています。結論から言えば団子紋は存在します。横向きの三つ串団子は資料では丸が付いています。ご主人の家紋には丸がないので、恐らく一番元になったものだと思われます」

そして続けて「団子紋」についてのエピソードもご紹介したのである。
織田信長と今川義元が合戦の折、陣中で酒宴の最中、信長が山内幸政に団子を三つ串刺しにして、敵の首をこのようにして獲ってみよと賜った。幸政はこれを頂き、功名を挙げ以後、串団子を家の紋としたという」(日本家紋総鑑より引用)
これを聞いた質問者はさすがに驚かれたご様子。
これで友達にバカにされずに済みます。本当にお忙しい所、ありがとうございました。
という事で電話を終えたのであった。
しかしまさか「串団子」が人の首であったというのは誰も思いもよらなかったであろう。

この庶民的で親しみやすい団子が意外にも「戦いのモチーフ」だったのである。

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京都家紋研究会

家紋を探る(ブログ)

森本景一
1950年大阪府生まれ。
染色補正師、(有)染色補正森本代表取締役。日本家紋研究会理事。
家業である染色補正森本を継ぎながら、家紋の研究を続け、長らく顧みられなかった彩色紋を復活させる。
テレビやラジオなどの家紋や着物にまつわる番組への出演も多い。
著書に『大宮華紋-彩色家紋集』(フジアート出版)、『女紋』(染色補正森本)、『家紋を探る』(平凡社)があるほか、雑誌や教育番組のテキストなどにも多数寄稿している。

森本勇矢
染色補正師。日本家紋研究会理事。京都家紋研究会会長。1977年生まれ。
家業である着物の染色補正業(有限会社染色補正森本)を父・森本景一とともに営むかたわら、家紋の研究に取り組む。
現在、「京都家紋研究会」を主宰し、地元・京都において「家紋ガイド(まいまい京都など)」を務めるほか、家紋の講演や講座など、家紋の魅力を伝える活動を積極的に行なっている。
家紋にまつわるテレビ番組への出演や、『月刊 歴史読本』(中経出版)への寄稿も多数。紋のデザインなども手がける。
著書に『日本の家紋大事典』(日本実業出版社)。
ブログ:家紋を探る京都家紋研究会



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