色に想ふ 〜森本景一色彩論〜 「配色」

基調色と強調色1

このような言葉をご存じだろうか?

◆基調色(ベースカラー) : 最も面積が広い。地色や背景色の事。
◆強調色(アクセントカラー) : 面積は小さい。ポイント色。視点を集中させる。

花
イメージ写真

例えば大地に咲いた花一輪をイメージして頂きたい。美しい光景であろう。
この花こそが強調色であり、これを美しく演出しているのが基調色である大地なのだ。
このように演出させたい色にはそれを引き立てる色が必要だ。つまりこれらはお互いの関係により美しさが成り立つ。しかしこの美しく咲いた花も時間と共に基調色と化してしまうのである。

古い寺院や仏像の多くは年月を得て黒ずんだ色や古木の落ち着いた色である。
それは人の目に優しい自然色であり、また基調色でもある。
しかしこれらが完成した当初は、人々の目を奪うような煌びやかな極彩色であったはずなのだ。
ところがこれらも時代の流れと共に強調色から味のある基調色へと変化して行ったのである。

ワーゲン・ビートル
ワーゲン・ビートル

また強調色とは何も鮮やかな色彩ばかりとは限らない。
モノトーンは一般的には基調色と思われがちだが、演出によっては強調色として使うことも出来る。
多彩色で埋め尽くされた中での白や黒は逆に目を引く場合がある。
その昔、私は愛車のワーゲン・ビートルをグレーに塗り替えた事がある。
当時、私のグレーのビートルは京都市内では大変珍しかったらしく、カラフルな町並みやクルマの中で目立たないはずのグレーが、逆に人々の目を引いていたのだ。
余談だが数年後、手放す事になった時、クルマの業者間では現物を見る事無く話しがまとまったという。